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小津安二郎の「東京物語」
学校の授業で小津安二郎監督の「東京物語」を学生に見せようと考えている。18〜9の彼らにとって、自分の親が生まれた頃の映画というわけだ。
私の授業では、どんな講議であれ、1回は見てもらうことになっていて、もう7〜8年続けている。
不思議なことに(?)、結構真剣に見てくれるし、中には共感してくれる学生もいたりする。ただ、あの光景を身近なものとして捕らえているかどうかは不明である。現在の外国よりも、もっと遠い存在として見ているのかもしれない...。
かつて、ヨーロッパの田舎を旅した時、(たぶん...)昔からの風景がそこかしこに残っていて、その風景の中で人々が生活していることに感銘を受けた。500年前の家に住み、1000年前の森を眺めているといった光景である。
日本で100年前の風景を見ることは難しい。50年前でも難しいだろう。30年前は?
人が育った環境にから、多くの事を学んでいくとするなら、30年前に育った人と、今育っている人の間には、埋めることのできない断絶が存在することになる。それは丁度、親子の年齢差でもある...。
自分が遊んだ鎮守の森がなくなって、子供が全く違った遊びをしているとするなら、何をどうやって伝えていくのか...それとも、伝えていくべきものは無いのか...。
いろいろの考え方はあるでしょうが、なんらかの形で、かつての日本の姿を見ておくことは、価値あることだと思います。まあ、「私が見たい」というだけのことかもしれませんが...。
監督:小津安二郎
出演:笠智衆,東千恵子,原節子
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