◆スウォッチ略歴
スイス最大のムーブメントメーカーETA社の社長アーンスト・トムケ博士が、台頭する日本や香港のクォーツと計に対抗することを目的とした、革命的ともいえる低コストの時計。1980年にプロジェクトに着手した時、「少数部品を使う単純構造」というコンセプトのもとに、次のような基本スペックが定められた。(1)時計はアナログでなくてはならず、デジタルは採用しない。(2)非常に高性能であり、正確でなければならない。(3)オートメーションで組み立てる部品の数を制限して、製造コストを押さえるものとする。
彼とふたりの技術者ジャック・ミューラー、エルマー・モックによって考えられた技術的突破口は、ケースとムーブメントを1つのユニットとして考えるというもので、ケースとベルトにはABS樹脂、クリスタルにはブレキシグラスをつかうことにし、部品数51個の軽くて頑強な防水機能付き腕時計が開発された。1983年に最初のコレクションの販売をスイスで開始する。
年に2回モデル・チェンジを行うため定番商品を持たないのが特徴。こうした、ファッション・アクセサリーと腕時計の中間的な製品を売るための戦略は、フランツ・X・スプレッシャーによって考えられ、「スウォッチ」のネーミングも、彼によってなされた。1986年に「ポップ・スウォッチ」、1990年に200m防水機能を持つ「スクーバ200」、同年「クロノグラフ」、1991年には自動巻、1995年には、初のメタルモデル「スウォッチ・アイロニー」、1997年には、プラスチック・クオーツ最薄の「スウォッチ・スキン」を発表するなど多くのバリエーションを持つ。一流デザイナーを起用した、「アート・スウォッチ」は1985年に登場。同じ文字盤が存在しない140個限定モデルだったため、大ヒット。以後、アメリカのキース・ヘリング、日本の横尾忠則に依頼したアーティスト・コレクション等が発表された。これまでに参加したアーティストの数は、約100名にのぼる。希少価値があることからコレクターズ・アイテムの対象となり、キキ・ピカソのプロトタイプがニューヨークのオークションで500万円近くで落札されたとの記録もある。
シーズン特定のスペシャルモデルは、クリスマス・スペシャル、ヴァレンタイン・スペシャル、ハロウィン・スペシャル等がある。デザインの拠点はミラノのクレアティブ・ラボ。そこで、70種類の新モデルを発売する場合、500近くのデザイン案が検討されるという。
短期間でデザイン、価格、販売方法の斬新さで成功したスウォッチは、発表後10年が経たない92年4月の段階で、総生産1億本を達成。この頃から盛んになったファッション・ブランドによる時計生産に先鞭をつける形で、スウォッチの先見性が証明された。96年アトランタオリンピックの公式時計となり、会期中に総生産2億本を達成した。
2000年には、シドニー・オリンピックの公式計時も担当した。
◆スウォッチのメッセージ
スウォッチは高品質、低価格、挑発、生活の悦楽を意味している。
社会全体の利益のために平和、環境、行動に対して責任をもつ。
人間としての心によって、信じられないような目的を達成する。
スウォッチのメッセージは穏やかだが、しかし地球上のすべての人に絶望的な状況で戦う意志と、具体的な努力をするための知性と、危険を冒す勇気と、子供の夢をもち続ける必要を示すものだ。
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